2011/07/09

「低線量でも人体に影響がある」のなら「黄砂」の影響は?

6月9日のエントリーで、
「動物細胞を使った実験では、低線量の放射線でも害があることが確認されていて、それゆえに「わずかな放射線でも人体に害がある」と声高に叫ぶ人がいる」
と書きました。この「わずかな放射線でも人体に害がある」という説はペトカウという学者(医師)による実験が最大の論拠になっているのですが、反原発派の人々はこれをかなり歪曲し、都合よく利用している節があるのです。「ぷろどおむ」という方が、ペトカウ氏の元の論文に当たって内容を検証されています。

「ペトカウ効果」は低線量被曝が健康に大きな影響を与える根拠となるのか?

ポイントは2つあります。ペトカウ氏は、1時間当たり0.6〜600ミリシーベルト(600〜600000マイクロシーベルト)という線量で実験をしていること。「現在首都圏で測定されている空間放射線量の1000倍以上高い領域での話」なのです。福島県の浪江町などには毎時30マイクロシーベルトを超えるホットスポットがありますが、それの20倍以上の線量です。これを「低線量」と呼んでいるわけです。放射線医療では10シーベルト(10000ミリシーベルト)単位の放射線照射を行なうこともあるので、それに比べれば「低線量」ではありますが、福島で観測されている線量でもそれよりはるかに「低線量」なのです。

もう一つは、この実験で「放射線の影響を最小限に抑えるためのシステムが生体には備わっていることがすでに確かめられている」ということ。反原発活動家はそのことには一切触れないわけです。しかも「実はこのペトカウ氏は、低線量放射線が人体に多大な影響を与えるなんてことは何一つ言っていない」。

そもそも試験管内の細胞に対する実験の結果をそのまま複雑なメカニズムをもつ人体にあてはめるのは無理があるわけですが、この実験よりはるかに少ない超微量の放射線被爆にあてはめるのはメチャクチャです。そもそも微量の放射線被爆の影響に関して諸説あるのは、誰が実験しても明確に結果が出るというわけではないからです。つまり、仮にあったとしても、極めて影響は小さいということです。

こんな微量な被曝量では、20年後、30年後に統計を取っても発がん率の上昇という形では現れないでしょう。チェルノブイリ事故では避難民11万5000人の甲状腺への平均線量は490mGy(490ミリシーベルトとほぼ同じ)でしたが、福島第一周辺の子供約1000人を対象に行なった調査では、最高値は毎時0.1マイクロシーベルトで、99%が毎時0.04マイクロシーベルト以下でした。放射性ヨウ素の半減期は8日で、すでにほぼ消滅していますから、年換算する意味はないのですが、仮に最高値の毎時0.1マイクロシーベルトを1年間被爆したとしても約0.9ミリシーベルトで、少なくともチェルノブイリの100分の1以下であることは間違いありません。

これで困っているのは反原発派の人々です。今までさんざん「放射能の恐怖」を煽り、「がんになる、がんになる」と騒いできたのに、こんな大事故が起きても何も起きないのですから。そこで彼らが何をやっているのかというと、さらに恐怖を煽って被災者に心理的ストレスを与え、健康を害させるように仕向けている。なんとしてでも被害を生み出したいわけです。イデオロギーに狂った人々の恐ろしさというのはこういうところにあります。

「東日本は人が住めなくなる」「1ミリシーベルトでも害がある」等の発言で“神様”と崇められているあの方がどんなイデオロギーをお持ちかは、下記のファイルを見ればよくわかります。

2003年6月14日 朝鮮の核問題 京都大学・原子炉実験所 小出裕章

ここには、「なぜ、朝鮮(注:北朝鮮のこと)は文明国になるために必要な「原子力開発=Nuclear development」をしてはならないのか?」と書かれています。文明国になるためには原子力開発が必要だそうで、日本はダメだが北朝鮮は原発も核兵器も開発していいそうです。これでは「反原発」ではなくて、ただの「反米」「反日」ではないのでしょうか。

ここで終わろうと思ったのですが、面白い記事を発見したので、もう少々。

黄砂に乗って微量セシウム 石川県保健環境センター調査「人体に影響なし」 北國新聞

中国では80年代から新疆ウイグルの砂漠地帯で核実験を数10回行なっています。それで放出された放射性セシウムが黄砂に乗って日本に降り注いでいるわけです。セシウム137の半減期は約30年なので、仮に30年前に行なわれた核実験で放出されたものでもまだ半分残っているということです。石川県保健環境センターの調査によると、県内で確認された放射性セシウムの量は、福島第一の事故で確認された量のなんと71倍。しかも黄砂はこの数十年、毎年飛んできているのです。昔はセシウム137の崩壊が進んでいないので、もっと量が多かったでしょう。

我々日本人は、数十年前から黄砂に乗ってやってきた放射性セシウムで被爆していたのです。黄砂は吸い込んでしまうわけですから、反原発派の人々が大好きな「内部被爆」をしてきたことになります。それも福島の事故で出たものよりはるかに多い量を毎年、毎年。これでどうやって「福島の事故分」だけの影響を語れるのでしょうか。反原発派の人々で黄砂の影響に触れている人を見たことがありません。中国は共産主義だから、黄砂の放射能は「いい放射能」なのでしょうか。