前回の続きで、少々補足をします。
出力が変動する風力や太陽光のバックアップに、火力発電ではなく蓄電池を利用するという考え方もあります。夜間に風が吹き、その電力を昼間に使う、あるいは晴れの日に貯めた電力を雨の日に使う。スマートグリッドの考え方で、蓄電池の導入でバックアップの火力発電をいくらか減らせるかもしれません。しかし、火力発電を減らしてコストダウンできても、蓄電池を導入した分コストアップします。また、蓄電池はそれ自体が発電するわけではないので限界もあります。1週間ぐらいの間、「発電できるほどの風が吹かない」、「雨が降り続けた」、となればそもそも貯める電力がないわけで、結局、火力で代替するしかなくなります。
私はこれまで「電池社会」を提唱してきましたが、それは原発(と大規模火力)という安定供給できるベースロード電源があって、夜間に充電した電力を昼間に使うという構想でした。蓄電池が安くなり、電力供給にある程度余裕がある状態を想定していて、蓄電池が普及すればそこに風力や太陽光の電力も貯めればいいと考えたのです。揚水発電の場合は、ある程度まとまった変動しない電力でないとポンプを動かせないはずで、風力や太陽光の電力を入れるのは難しいですが、蓄電池ならふらふら変動する電力でも吸収できるわけです。もちろん、原発を火力で代替してもこの構図は成り立つわけですが、火力は化石燃料の価格と供給の両面からリスクを抱え込むことになります。この話はちょっと置いておきますが、現在のような需給がひっ迫している状況では、少なくとも蓄電池を導入すれば風力や太陽光が主力になれるというわけではないということです。
その一方で、風力や太陽光を大量導入するためには、蓄電池はやはり必要になってくるでしょう。むしろ蓄電池を利用する理由は、出力変動を抑えるためと考えたほうがいいと思います。電力のシステムというのは需要と供給がぴったり一致した状態に保たないと安定しません。需要に対して供給は多すぎても少なすぎても、停電は起きます。そのしくみについて安井至先生が下記のサイトで解説されています。
3.11以後のエネルギー戦略3
停電までいかなくても、需要に対して供給が多いと電圧と周波数が上がり、少ないと電圧と周波数は下がります。現実には、変動する需要に対して供給をコントロールする必要があるわけですが、供給側に位置する太陽光や風力が変動してしまうわけで、コントロールが非常に難しくなります。太陽光や風力のような変動する電力は、電圧と周波数の変動を生むのです。最近の家電製品はインバータが入っているので、電圧や周波数の変動は一般家庭にはあまり影響ありませんが、企業の製造工場では問題を起こします。製紙工場や繊維工場の糸や紙の巻き取り工程、アルミ工場の圧延工程、石油精製工場の分解・脱硫工程、自動車工場の溶接工程などで品質問題を引き起こすといわれています。日本の電力は品質が高く、ごく稀に起きる電圧や周波数の変動に対して対策するとなると、コストアップの要因になるので、対策をしていない企業も多いのです。電力系統に影響を与えないよう、発電した電力をいったん蓄電池に貯めて、オンデマンドで取り出せるようにすることで、出力変動を抑えようということです。電力の受け入れ先として、電気自動車の蓄電池を利用するという考え方もあります。
結局は、もし大量に導入しようと思えば、バックアップの火力発電も出力変動を抑える蓄電池も必要になるのです。少量であれば問題ないが、大量に入れようと考えると、こういったよけいなコストがかかるということです。今後、日本で原発の新規建設は不可能でしょうから、もはや「脱原発」は既定路線だと言えます。ならば、どうすれば原発を代替できるのかを冷静に議論したいものです。
2011/06/04
2011/06/01
太陽光・風力発電を大量導入するときの見えないコスト
1つ前のエントリーで、揚水発電で電力不足分を賄えるかという話を書きましたが、いつのまにか供給量が積み増されていたようです。こういう「いいニュース」は大きく報じられないのですね。
東電5500万キロワット供給へ 夏の電力計画引き上げ
企業の自家発電の余剰電力や揚水発電所の稼働率向上、被災した広野火力発電所の一部復旧で、5500万kWにまで増える見通し。今夏が平年並みの暑さならギリギリ賄える水準です。ただ、東北電力は270万kW不足する見込みで、東電が100万kWを融通するそうなので、東電管内の企業に対しては15%の節電を求めています。25%よりは大幅に減りましたが、輪番操業などは必要になりそうです。
東芝は、東電管内の本社・支社で7〜9月にかけ3週間の夏季休日、東電管内の製造拠点は7〜8月にかけ2週間の夏季休日を設定するそうです。工場は半月休むということで、正社員は給料減らないかもしれませんが、会社側の負担は増えることになり、時給で働いているパートやアルバイトは労働時間が半分になり、給料は半額になるのではないでしょうか。
被災した東電、東北電の管内で電力の需給がひっ迫するのは仕方がないことですが、全国で定期点検のために停止した原発が、地元の反対で再稼働できなくなっているため、電力不足が全国に広がる気配です。
夏の電力切迫の恐れ 全国の原発54基中42基停止も
中部電力は浜岡を停止させられたので、需給がひっ迫し、東電へ電力を融通できなくなり、九州電力では玄界の運転再開ができず、需要ピーク時に20〜25%も不足。四国電力は伊方再開のために周辺の2万1000戸に戸別訪問するそうです。冷夏になれば別ですが、平年並みの暑さなら、全国で計画停電が必要になるかもしれません。私は関西への工場移転を提言しましたが、まさかこんなことになるとは。このままだと関西に移転してもダメですね。
前置きが長くなりました。
今回は、5月下旬に開催されたG8サミットで、菅首相が「2020年代の早い時期に再生可能エネルギーの比率を電力需要の20%にまで高める」「1000万戸にソーラーパネルを設置する」と宣言した件について、少々書きます。
経済評論家の池田信夫氏が以下のような記事を書かれています。
太陽光発電という「課税」
ソーラーパネルを1000万戸に設置するには、補助金と高額な電力買い取りで、国民負担が3兆5000億円増大するとのこと。補助金は天から降ってくるわけではなく、国民が収めた税金ですし、電力会社が高額で買い取れば、そのコスト増は電気代のアップで賄うしかありません。消費税の税収は1%で2兆4000億円ほどなので、1.5%分ぐらいが飛んでいくということです。しかも1000万戸に設置しても電力需要の4%ほどにしかなりません。この宣言について国会での審議はおろか、海江田経産相も「聞いてない」と答えたそうで、鳩山首相のときと同様、菅首相の独断のようです。
実は風力や太陽光の発電コストは上記だけではありません。出力が安定しない風力・太陽光発電の電力を需要の20%まで導入するには、バックアップの電源が必ず必要になるのです。
電力会社は夏場の電力需要のピーク時に合わせて発電設備の投資を行ないます。日本では夏以外の季節には需要は下がるので、多くの発電所は遊んでいることになるのですが、ピーク時に電力を供給できなければ停電が起きるので、そうせざるをえないのです。
しかし、日本では夏場に発電できるほどの強い風が吹かないことが多く、現実に日本の風力発電事業者の発電実績は冬場に集中しています。夏場は戦力にならないのです。一方の太陽光発電は、日中晴れなら発電できますが雨ならほとんど発電できません。一般家庭に導入する太陽光発電の場合は、自家消費でピークカットする効果があるわけですが、雨の日は電力会社から買うわけで需要が増加します。雨の日は気温が下がるので多少需要が落ちますが、企業の製造工場では天気に関係なく製造のための電力需要が発生するし、蒸し暑ければ一般家庭でエアコンが利用されます。東電の場合、企業など大口需要家と一般家庭の比率は7:3ぐらいなので、雨であってもそれなりに需要はあるということです。「雨が降ったので、今日は停電します」というのは、需要家にとってはありない話です。
大量に導入すれば、どこかで晴れていたりどこかで風が吹いていたりするので平滑化されて問題ないというのですが、「日本中で雨の日」はあるし、「日本中であまり風が吹かない日」はあります。いくら気象予測が正確・精密にできるようになったとしても、風が吹かない日は吹かないし、雨が降る日は降るのです。夏場のピーク時に1日でもそんな日があるのなら供給がショートするので、20%分だといっても、結局は代替する電源、すなわち火力発電所を用意しておく必要があります。
ですから、太陽光や風力を大量導入するには、その設備容量と同じ容量だけ火力発電所を建設しなければならないということです。今から順次導入していく分には既存の火力発電所があるのでいいのですが、将来的に火力発電所が老朽化してきたら、風力や太陽光のバックアップのために新規に火力発電所を建設しなければならなくなります。どれほど太陽光・風力が増えても、今と同じだけ火力発電所をもっておくということです。その建設コストも本来なら発電コストに上乗せされるはずなのです。
風力が普及しているヨーロッパでも、火力発電をバックアップに使っています。大陸で風が安定しているとはいえ、予測に逆らって急にパタッとやむことも現実にあります。いくら火力の起動は早いといっても、急な変動には追いつけません。だから、常に炉を炊いてアイドリング状態にしておくのです。量の多少はありますが、発電してもしなくても化石燃料は消費されるということです。炉を炊いているのに発電しないのですから、その燃料コストとCO2排出も本来なら上乗せされるべきでしょう。
つまり、風力や太陽光を大量に導入するには、見えないところでそういったコストがかかるということです。では、なぜ今は風力や太陽光の電力が入っているかというと、総電力需要に占める割合が極めて小さく、入っても入らなくても影響がほとんどないからです。
東大名誉教授の安井至先生は「日本では地熱と中小水力が最有力」とおっしゃっています。一定の電力を安定的に取り出せるからで、代替の火力発電や蓄電池がなくても戦力になるのです。資源エネルギー庁の「エネルギー白書2010」によれば、1kWあたりの風力の発電コストは10〜14円、太陽光49円、地熱8〜22円とされていますが、上記のコストを含めれば、風力と地熱のコストは逆転するのではないでしょうか。
Googleは地熱ベンチャーに1000万ドル投資しています。従来の温泉を掘り当てる方式ではなく、さらに深く高温岩体まで掘って、水を注入して温める方式です。掘るコストが高くつくのが課題で、その研究開発をしているわけです。もちろん、ベンチャーですから現段階では成功するかどうかはわかりません。
東電5500万キロワット供給へ 夏の電力計画引き上げ
企業の自家発電の余剰電力や揚水発電所の稼働率向上、被災した広野火力発電所の一部復旧で、5500万kWにまで増える見通し。今夏が平年並みの暑さならギリギリ賄える水準です。ただ、東北電力は270万kW不足する見込みで、東電が100万kWを融通するそうなので、東電管内の企業に対しては15%の節電を求めています。25%よりは大幅に減りましたが、輪番操業などは必要になりそうです。
東芝は、東電管内の本社・支社で7〜9月にかけ3週間の夏季休日、東電管内の製造拠点は7〜8月にかけ2週間の夏季休日を設定するそうです。工場は半月休むということで、正社員は給料減らないかもしれませんが、会社側の負担は増えることになり、時給で働いているパートやアルバイトは労働時間が半分になり、給料は半額になるのではないでしょうか。
被災した東電、東北電の管内で電力の需給がひっ迫するのは仕方がないことですが、全国で定期点検のために停止した原発が、地元の反対で再稼働できなくなっているため、電力不足が全国に広がる気配です。
夏の電力切迫の恐れ 全国の原発54基中42基停止も
中部電力は浜岡を停止させられたので、需給がひっ迫し、東電へ電力を融通できなくなり、九州電力では玄界の運転再開ができず、需要ピーク時に20〜25%も不足。四国電力は伊方再開のために周辺の2万1000戸に戸別訪問するそうです。冷夏になれば別ですが、平年並みの暑さなら、全国で計画停電が必要になるかもしれません。私は関西への工場移転を提言しましたが、まさかこんなことになるとは。このままだと関西に移転してもダメですね。
前置きが長くなりました。
今回は、5月下旬に開催されたG8サミットで、菅首相が「2020年代の早い時期に再生可能エネルギーの比率を電力需要の20%にまで高める」「1000万戸にソーラーパネルを設置する」と宣言した件について、少々書きます。
経済評論家の池田信夫氏が以下のような記事を書かれています。
太陽光発電という「課税」
ソーラーパネルを1000万戸に設置するには、補助金と高額な電力買い取りで、国民負担が3兆5000億円増大するとのこと。補助金は天から降ってくるわけではなく、国民が収めた税金ですし、電力会社が高額で買い取れば、そのコスト増は電気代のアップで賄うしかありません。消費税の税収は1%で2兆4000億円ほどなので、1.5%分ぐらいが飛んでいくということです。しかも1000万戸に設置しても電力需要の4%ほどにしかなりません。この宣言について国会での審議はおろか、海江田経産相も「聞いてない」と答えたそうで、鳩山首相のときと同様、菅首相の独断のようです。
実は風力や太陽光の発電コストは上記だけではありません。出力が安定しない風力・太陽光発電の電力を需要の20%まで導入するには、バックアップの電源が必ず必要になるのです。
電力会社は夏場の電力需要のピーク時に合わせて発電設備の投資を行ないます。日本では夏以外の季節には需要は下がるので、多くの発電所は遊んでいることになるのですが、ピーク時に電力を供給できなければ停電が起きるので、そうせざるをえないのです。
しかし、日本では夏場に発電できるほどの強い風が吹かないことが多く、現実に日本の風力発電事業者の発電実績は冬場に集中しています。夏場は戦力にならないのです。一方の太陽光発電は、日中晴れなら発電できますが雨ならほとんど発電できません。一般家庭に導入する太陽光発電の場合は、自家消費でピークカットする効果があるわけですが、雨の日は電力会社から買うわけで需要が増加します。雨の日は気温が下がるので多少需要が落ちますが、企業の製造工場では天気に関係なく製造のための電力需要が発生するし、蒸し暑ければ一般家庭でエアコンが利用されます。東電の場合、企業など大口需要家と一般家庭の比率は7:3ぐらいなので、雨であってもそれなりに需要はあるということです。「雨が降ったので、今日は停電します」というのは、需要家にとってはありない話です。
大量に導入すれば、どこかで晴れていたりどこかで風が吹いていたりするので平滑化されて問題ないというのですが、「日本中で雨の日」はあるし、「日本中であまり風が吹かない日」はあります。いくら気象予測が正確・精密にできるようになったとしても、風が吹かない日は吹かないし、雨が降る日は降るのです。夏場のピーク時に1日でもそんな日があるのなら供給がショートするので、20%分だといっても、結局は代替する電源、すなわち火力発電所を用意しておく必要があります。
ですから、太陽光や風力を大量導入するには、その設備容量と同じ容量だけ火力発電所を建設しなければならないということです。今から順次導入していく分には既存の火力発電所があるのでいいのですが、将来的に火力発電所が老朽化してきたら、風力や太陽光のバックアップのために新規に火力発電所を建設しなければならなくなります。どれほど太陽光・風力が増えても、今と同じだけ火力発電所をもっておくということです。その建設コストも本来なら発電コストに上乗せされるはずなのです。
風力が普及しているヨーロッパでも、火力発電をバックアップに使っています。大陸で風が安定しているとはいえ、予測に逆らって急にパタッとやむことも現実にあります。いくら火力の起動は早いといっても、急な変動には追いつけません。だから、常に炉を炊いてアイドリング状態にしておくのです。量の多少はありますが、発電してもしなくても化石燃料は消費されるということです。炉を炊いているのに発電しないのですから、その燃料コストとCO2排出も本来なら上乗せされるべきでしょう。
つまり、風力や太陽光を大量に導入するには、見えないところでそういったコストがかかるということです。では、なぜ今は風力や太陽光の電力が入っているかというと、総電力需要に占める割合が極めて小さく、入っても入らなくても影響がほとんどないからです。
東大名誉教授の安井至先生は「日本では地熱と中小水力が最有力」とおっしゃっています。一定の電力を安定的に取り出せるからで、代替の火力発電や蓄電池がなくても戦力になるのです。資源エネルギー庁の「エネルギー白書2010」によれば、1kWあたりの風力の発電コストは10〜14円、太陽光49円、地熱8〜22円とされていますが、上記のコストを含めれば、風力と地熱のコストは逆転するのではないでしょうか。
Googleは地熱ベンチャーに1000万ドル投資しています。従来の温泉を掘り当てる方式ではなく、さらに深く高温岩体まで掘って、水を注入して温める方式です。掘るコストが高くつくのが課題で、その研究開発をしているわけです。もちろん、ベンチャーですから現段階では成功するかどうかはわかりません。
2011/04/09
この夏の輪番停電(操業)で何が起きるか
このところテレビや新聞などの大手メディアに、専門家でもなんでもない「反原発活動家」が登場して、放射性物質汚染の恐怖を煽りまくっています。パニックで二次災害が起きて死者がたくさん出たら、それも東電や政府に責任をなすりつけるのでしょう。
彼らの多くは常々「原発をすべて止めても電力はカバーできる」と言い続けてきました。もういきなり嘘だったことが判明しているわけですが、そのことを誰も問い詰めようとはしません。「止まっている時計も1日に2回、正確な時刻を示す」という言葉があります。「事故が起きる」と言い続けていれば、いつか当たるかもしれない。当たったからといって、他のすべての言動が正しいとは限りません。
電力需要のピーク時は7月末〜8月初めごろのもっとも暑くなるお昼過ぎで、ピーク時に必要な電力を供給できなければ停電が起きるので、電力会社はそれに合わせて発電施設に投資します。日本の電力需要は夏冬と春秋で倍近くも差があり、昼夜でも大きな差があるので、電力需要の低い時期には多くの発電施設は遊んでいることになりますが、ピーク時にはフル稼働に近い状態で、どこかでトラブルが発生したときに備えてバックアップのために老朽化した火力発電を残しているだけになります。原子力は電力需要の25%を担っているので、これで原発を止めてカバーできるわけがありません。
東電管内の真夏のピークは平均で5500万kW、2010年のような猛暑では6000万kWになることが予想され、東電はガスタービン発電などの新設で4650万kWまで供給可能としています。平年並みなら15%、猛暑なら23%足りないことになります。
政府は、全閣僚で構成する「電力需給緊急対策本部」で、今夏、大口需要家への電力使用制限令の発動や家庭への節電要請により、計画停電を実施しないことを決めました。東電の場合、約7割が工場など大口需要家、約3割が一般家庭で、大口需要家に節電を求めた方が効果的との判断でしょう。しかし、日本はエネルギーコストが高いので、国際競争にさらされている大手企業の工場などは極限まで省エネが進められています。節電を求められても照明を消すぐらいしかすることがなく、結局は操業を停止するしかありません。
経団連は自主的に「節電計画」作成を進めています。自工会は、たとえば工場の休業日をトヨタは日月曜日、日産は火水曜日、ホンダは木金曜日とズラす「輪番操業」を検討してます。しかし、トヨタとマツダは東電管内にほとんど生産設備がないので、ホンダと日産だけが割を食う形になりかねません。電機や半導体、鉄鋼などは一度工場を停止すると再稼働まで日数がかかるので、かなり難しいとされています。百貨店やスーパーなどは順番に休業日を作ることが検討されています。
輪番操業が仮にうまくいったとしても、休業が増えるわけで、工場やスーパーなどで時給で働いている非正規社員の給料は大幅に減ります。正社員は補償されていますが、ボーナスは確実に減るでしょう。経団連は電力消費25%削減を目標にしているので、大雑把に言えば操業が25%減って給料も25%減ることになります(企業側がどこまで人件費に転嫁するかによりますが)。これで何が起きるかと言えば、「デフレ」です。今は日本全体が自粛ムードに包まれているので、モノを製造しても仕方がないと思うかもしれませんが、労働者の給料まで減れば、デフレを加速することになるでしょう。
今年はもはやどうしようもないですが、火力発電所を建てるにしても1年やそこらではとうてい無理です。電力を自由化して、民間から発電事業への参入を募る必要もありますが、来年以降も輪番操業が続くなら、いよいよ工場の移転が始まります。従業員を引き連れて西日本に移転するならいいですが、海外に移転すれば失業者が増え、下請け企業の倒産も起きます。景気と失業者数、自殺者数は明確に関連があります。私は「自殺者が増える」と予想します。
景気、失業者数、自殺者数の変動幅の推移
つまり、「風が吹けば〜」みたいな話ですが、電力が供給されないと死者が増えるということです。
私は、政府に対して「企業が西日本や北海道(東電、東北電力以外のエリア)へ工場を移転する際の優遇策」を提言します。税金免除でも補助金でもいい。関東圏から工場と人が減れば、少ない電力で賄えるようになります。大阪に首都を移転するという案も考えてみる必要があるように思います。
彼らの多くは常々「原発をすべて止めても電力はカバーできる」と言い続けてきました。もういきなり嘘だったことが判明しているわけですが、そのことを誰も問い詰めようとはしません。「止まっている時計も1日に2回、正確な時刻を示す」という言葉があります。「事故が起きる」と言い続けていれば、いつか当たるかもしれない。当たったからといって、他のすべての言動が正しいとは限りません。
電力需要のピーク時は7月末〜8月初めごろのもっとも暑くなるお昼過ぎで、ピーク時に必要な電力を供給できなければ停電が起きるので、電力会社はそれに合わせて発電施設に投資します。日本の電力需要は夏冬と春秋で倍近くも差があり、昼夜でも大きな差があるので、電力需要の低い時期には多くの発電施設は遊んでいることになりますが、ピーク時にはフル稼働に近い状態で、どこかでトラブルが発生したときに備えてバックアップのために老朽化した火力発電を残しているだけになります。原子力は電力需要の25%を担っているので、これで原発を止めてカバーできるわけがありません。
東電管内の真夏のピークは平均で5500万kW、2010年のような猛暑では6000万kWになることが予想され、東電はガスタービン発電などの新設で4650万kWまで供給可能としています。平年並みなら15%、猛暑なら23%足りないことになります。
政府は、全閣僚で構成する「電力需給緊急対策本部」で、今夏、大口需要家への電力使用制限令の発動や家庭への節電要請により、計画停電を実施しないことを決めました。東電の場合、約7割が工場など大口需要家、約3割が一般家庭で、大口需要家に節電を求めた方が効果的との判断でしょう。しかし、日本はエネルギーコストが高いので、国際競争にさらされている大手企業の工場などは極限まで省エネが進められています。節電を求められても照明を消すぐらいしかすることがなく、結局は操業を停止するしかありません。
経団連は自主的に「節電計画」作成を進めています。自工会は、たとえば工場の休業日をトヨタは日月曜日、日産は火水曜日、ホンダは木金曜日とズラす「輪番操業」を検討してます。しかし、トヨタとマツダは東電管内にほとんど生産設備がないので、ホンダと日産だけが割を食う形になりかねません。電機や半導体、鉄鋼などは一度工場を停止すると再稼働まで日数がかかるので、かなり難しいとされています。百貨店やスーパーなどは順番に休業日を作ることが検討されています。
輪番操業が仮にうまくいったとしても、休業が増えるわけで、工場やスーパーなどで時給で働いている非正規社員の給料は大幅に減ります。正社員は補償されていますが、ボーナスは確実に減るでしょう。経団連は電力消費25%削減を目標にしているので、大雑把に言えば操業が25%減って給料も25%減ることになります(企業側がどこまで人件費に転嫁するかによりますが)。これで何が起きるかと言えば、「デフレ」です。今は日本全体が自粛ムードに包まれているので、モノを製造しても仕方がないと思うかもしれませんが、労働者の給料まで減れば、デフレを加速することになるでしょう。
今年はもはやどうしようもないですが、火力発電所を建てるにしても1年やそこらではとうてい無理です。電力を自由化して、民間から発電事業への参入を募る必要もありますが、来年以降も輪番操業が続くなら、いよいよ工場の移転が始まります。従業員を引き連れて西日本に移転するならいいですが、海外に移転すれば失業者が増え、下請け企業の倒産も起きます。景気と失業者数、自殺者数は明確に関連があります。私は「自殺者が増える」と予想します。
景気、失業者数、自殺者数の変動幅の推移
つまり、「風が吹けば〜」みたいな話ですが、電力が供給されないと死者が増えるということです。
私は、政府に対して「企業が西日本や北海道(東電、東北電力以外のエリア)へ工場を移転する際の優遇策」を提言します。税金免除でも補助金でもいい。関東圏から工場と人が減れば、少ない電力で賄えるようになります。大阪に首都を移転するという案も考えてみる必要があるように思います。
2011/04/03
原発のスイッチを入れよ
福島第一1号機が爆発する映像を見て、こんな映像が日本中に流されたらもう日本で原発の新設はおろか、定期点検で止められていた原発の再起動も認められず、現在運転中の原発もすべて停止されることになるのではないかと思いました。
事故が起きてから3週間、私は「果たして日本は原子力利用抜きでやっていけるのだろうか」と考え続けました。しかし、やはり無理だとの結論に達しました。
このまま計画停電が続けば、関東地方の大企業の本社オフィスや製造工場はどんどん逃げ出します。従業員を引き連れて西日本に移動するならマシですが、かろうじて日本に踏みとどまっていた製造工場は海外への移転を選択するでしょう。失業者が増え、経済は失速します。日本の年金は貯蓄型ではなく、若者が高齢者の年金を負担する賦課型なので、これも早晩破綻するでしょう。日本全体が沈没しかねない事態です。
実情を知らない人はのんきに「風力や太陽光で原発を代替しろ」と言いますが、日本では不可能です。ヨーロッパやアメリカなどの大陸国と違い、日本は山岳地帯が多く地形が複雑なので、風向が安定せず、風力に向いていません。洋上に出れば風が安定しますが、日本の沿岸の地形は、遠浅のデンマークなどと違って水深が一気に深くなるので、建設コストが跳ね上がります。太陽光も単位面積当たりの発電量が少ないうえ、雨が多い国なので、やはり向いていない。再生可能エネルギーとしては実は地熱や水力が一番向いているのですが、温泉地になっている地域では温泉の湧出に影響が出るとして地熱に大反対で、日本の大河川にはすでにあらかた水力ダムが建設されています。
もし無理やり原子力を風力と太陽光で代替すれば、電気代は2倍ぐらいになるでしょう。普及させるために多額の補助金を出せば、それも負担として跳ね返ってきます。火力で補うにしても、ニュースではほとんど報道されていませんが、原油価格はすでに1バレル108ドル(4月1日)に達しています。石油が上がれば、天然ガスも石炭も連動して上がります。
電気代が2倍になっても一般家庭の場合は他を切り詰めて何とかできるでしょうが(消費が冷え込んで景気が悪化しますが)、企業の場合はそうはいきません。ただでさえ日本は、人件費や土地が高く、エネルギー資源を輸入に頼っているため、エネルギーコストも高いわけですが、電気代が2倍になればやはり工場は日本から逃げ出します。
これまで私はBlogで、半分夢みたいな話を将来への期待として書いてきました。電池が安くなればこんなことが可能になるよ、と。しかし、今回の震災でそんな悠長なことは言っていられなくなりました。日本は沈没しかねない危機的状況にあります。
今発売されているSAPIOで、森永卓郎氏は「原発のスイッチを入れよ」と提言しています。私もまったく同意です。仮に将来的に代替するにしても、今は動かさざるをえない状況だと思います。
今回の福島の事故では、地震で排気筒のクレーン操縦室に閉じこめられて亡くなった作業員の方はおられますが、原子力事故による死者は今のところ一人も出ていません。大量に被爆した作業員が将来的にガンを発症する可能性はありますが、周辺地域の人々は避難しているので、ほとんど影響はありません。4月2日のNHKニュースで、放射線医学総合研究所が被爆による発ガンリスクの上昇率を発表していましたが、避難地域以外で放射線レベルがもっとも高い福島県飯舘村で、今の状態が3か月続くと仮定した場合(まだ3週間)で0.1%上昇(乳幼児は0.25%)、東京の場合で0.02%上昇するとのことです。発ガンの原因は食生活(というより食べ物そのもの)と喫煙が最大で、そもそも日本人の半分はいずれガンを発症するので、この程度の上昇を気にしても仕方がないのです。今の東京より自然界からの放射線レベルがはるかに高い地域は、世界中にいくらでもありますし、飛行機で海外旅行をする方がはるかに多くの被爆をします。
事故による経済的な損失は数兆円単位になるでしょうが、人的被害は意外にも少ないのです。原発と同じ文明の利器である自動車やバイクによる交通事故で死ぬ人は年間5000人です。この60年間に約60万人もの人々が交通事故で亡くなっています。それでも私たちは平気で自動車に乗っているわけです。
計画停電で信号が消えて交通事故が起き、死亡事故も起きました。夏場に計画外の事故的な停電が起きれば、病院等で亡くなる方も出てくる可能性もあります。熱中症で亡くなる高齢者も出てくるかもしれません。
今夏の計画停電で、電力がどれほど重要なものかを日本人は思い知ることになるのでしょう。そしかしたら「リスク」に対する意識も変わるかもしれません。今はそれに期待するしかないような気もします。何よりも作業員が怪我をすることもなく、福島の事故が一刻も早く終息することを願ってやみません。
事故が起きてから3週間、私は「果たして日本は原子力利用抜きでやっていけるのだろうか」と考え続けました。しかし、やはり無理だとの結論に達しました。
このまま計画停電が続けば、関東地方の大企業の本社オフィスや製造工場はどんどん逃げ出します。従業員を引き連れて西日本に移動するならマシですが、かろうじて日本に踏みとどまっていた製造工場は海外への移転を選択するでしょう。失業者が増え、経済は失速します。日本の年金は貯蓄型ではなく、若者が高齢者の年金を負担する賦課型なので、これも早晩破綻するでしょう。日本全体が沈没しかねない事態です。
実情を知らない人はのんきに「風力や太陽光で原発を代替しろ」と言いますが、日本では不可能です。ヨーロッパやアメリカなどの大陸国と違い、日本は山岳地帯が多く地形が複雑なので、風向が安定せず、風力に向いていません。洋上に出れば風が安定しますが、日本の沿岸の地形は、遠浅のデンマークなどと違って水深が一気に深くなるので、建設コストが跳ね上がります。太陽光も単位面積当たりの発電量が少ないうえ、雨が多い国なので、やはり向いていない。再生可能エネルギーとしては実は地熱や水力が一番向いているのですが、温泉地になっている地域では温泉の湧出に影響が出るとして地熱に大反対で、日本の大河川にはすでにあらかた水力ダムが建設されています。
もし無理やり原子力を風力と太陽光で代替すれば、電気代は2倍ぐらいになるでしょう。普及させるために多額の補助金を出せば、それも負担として跳ね返ってきます。火力で補うにしても、ニュースではほとんど報道されていませんが、原油価格はすでに1バレル108ドル(4月1日)に達しています。石油が上がれば、天然ガスも石炭も連動して上がります。
電気代が2倍になっても一般家庭の場合は他を切り詰めて何とかできるでしょうが(消費が冷え込んで景気が悪化しますが)、企業の場合はそうはいきません。ただでさえ日本は、人件費や土地が高く、エネルギー資源を輸入に頼っているため、エネルギーコストも高いわけですが、電気代が2倍になればやはり工場は日本から逃げ出します。
これまで私はBlogで、半分夢みたいな話を将来への期待として書いてきました。電池が安くなればこんなことが可能になるよ、と。しかし、今回の震災でそんな悠長なことは言っていられなくなりました。日本は沈没しかねない危機的状況にあります。
今発売されているSAPIOで、森永卓郎氏は「原発のスイッチを入れよ」と提言しています。私もまったく同意です。仮に将来的に代替するにしても、今は動かさざるをえない状況だと思います。
今回の福島の事故では、地震で排気筒のクレーン操縦室に閉じこめられて亡くなった作業員の方はおられますが、原子力事故による死者は今のところ一人も出ていません。大量に被爆した作業員が将来的にガンを発症する可能性はありますが、周辺地域の人々は避難しているので、ほとんど影響はありません。4月2日のNHKニュースで、放射線医学総合研究所が被爆による発ガンリスクの上昇率を発表していましたが、避難地域以外で放射線レベルがもっとも高い福島県飯舘村で、今の状態が3か月続くと仮定した場合(まだ3週間)で0.1%上昇(乳幼児は0.25%)、東京の場合で0.02%上昇するとのことです。発ガンの原因は食生活(というより食べ物そのもの)と喫煙が最大で、そもそも日本人の半分はいずれガンを発症するので、この程度の上昇を気にしても仕方がないのです。今の東京より自然界からの放射線レベルがはるかに高い地域は、世界中にいくらでもありますし、飛行機で海外旅行をする方がはるかに多くの被爆をします。
事故による経済的な損失は数兆円単位になるでしょうが、人的被害は意外にも少ないのです。原発と同じ文明の利器である自動車やバイクによる交通事故で死ぬ人は年間5000人です。この60年間に約60万人もの人々が交通事故で亡くなっています。それでも私たちは平気で自動車に乗っているわけです。
計画停電で信号が消えて交通事故が起き、死亡事故も起きました。夏場に計画外の事故的な停電が起きれば、病院等で亡くなる方も出てくる可能性もあります。熱中症で亡くなる高齢者も出てくるかもしれません。
今夏の計画停電で、電力がどれほど重要なものかを日本人は思い知ることになるのでしょう。そしかしたら「リスク」に対する意識も変わるかもしれません。今はそれに期待するしかないような気もします。何よりも作業員が怪我をすることもなく、福島の事故が一刻も早く終息することを願ってやみません。
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