2011/09/13

フランスの核施設で爆発事故

フランス南部マルクールの核廃棄物処理施設で爆発事故が起きました。

仏の核施設で爆発、1人死亡4人負傷 「放射能漏れなし」 当局は収束宣言 日本経済新聞

情報が錯綜していて、正確なところはわかりませんが、低レベルまたは極低レベルの金属放射性廃棄物を溶かす炉のある施設のようです。報道では「溶融炉」という言葉が使われているので(2ch系のサイトでは「核溶融炉」と書かれている)、何か核燃料の類いを扱っているような気がしてしまいますが、おそらくは製鉄所の電炉のような炉がある施設だと考えられます。核廃棄物といっても、原発内で使用した工具やポンプなどのスクラップや作業服、手袋などで、もともと大量の放射性物質がある場所ではないはずなので、当局の「放射能漏れはない」という発表は本当だろうと思います。放射性物質は放射線を出すので極めて微量でも簡単に検知でき、それゆえに今、日本中で大騒ぎになっているわけですが、もし外に漏れていたら周辺各国で即座に検知されているはずです。北朝鮮の核実験でも瞬時に偵察衛星で検知できるわけです。

政府当局者は「人的なミス」としているようですが、いったい何が原因なのでしょう。「製鉄所 爆発事故」でググってみるとわかりますが、一般的に爆発事故が起きやすいのは石炭を原料に使うコークス炉などの高炉メーカーの製鉄所で、コークス炉ガス(COG)のガス爆発事故がかなりの頻度で起きていて、事故のたび、多くの作業員の方々が亡くなられています。ただ、スクラップを融かす施設なので、おそらくは電炉だと考えられます。電炉の場合、廃棄物に水が多量に含まれていて水蒸気爆発を起こすことがあるようですが、水蒸気爆発で遺体が炭化するほど燃え続けるだろうかという疑問が残ります。可燃性の燃料がないとそういう状態にはならないような気がします。もしかしてテロ? という気がしないでもありませんが、今後の事故調査を見守る必要があるでしょう。

いずれにせよ、原子炉以外の周辺施設は安全基準が緩いので、こういった事故は起きうるわけですが、福島の事故の後で「核廃棄物の処理施設で爆発事故」となると、フランスのエネルギー政策にも影響を及ぼす可能性は否定できません。フランスは電力供給の8割を原子力に頼っている国で、普通で考えれば脱原発は不可能ですが、もし国民がヒステリー起こして是が非でもやるとなれば影響はEU全体に及びます。図(エネルギー白書2010より抜粋)にあるように、ドイツもイタリアもイギリスもスペインも、みんなフランスの電力に依存しています。フランスに電力を輸出に回す余力がなくなれば、各国とも自前で賄わなければならなくなります。自前で火力発電所を建設していくしかなく、化石燃料は高騰し、各国の脱原発政策にもブレーキがかかるでしょう。これはあくまで「フランスが脱原発を選択したら」という仮の話で、そうはならないとは思いますが。