2011/06/07

中国の風車は3分の1が電力系統に接続されていない

前回とちょっと関係のある話です。

風力発電拡大に落とし穴、大規模な送電網脱落事故で--中国

専門用語が多いので、簡単に説明します。今年の2月24日に中国・甘粛省の風力発電所で、事故でショート(短絡)が起きて電圧が変動し、300基の風車が一斉に「解列」した。「解列」というのは、電圧が変動すると発電機が壊れる危険が高まるので、系統から切り離して発電機を守るということ。安全装置が働いた状態です。しかし、解列が起きると風車は電力を系統に送らなくなるわけで、電圧はさらに低下し、解列をどんどん引き起こします。結果的に、計598基が解列し、設備容量84万kW分の電力が喪失した。さらに4月17日に同じく甘粛省で702基、容量100万kW分が解列。同じ4月17日には河北省で644基、85万4000kW分が解列する脱落事故が起きたそうです。他にも中国の風力発電所ではしょっちゅう脱落事故が起きているようです。

ヨーロッパでも2006年11月に大規模な脱落事故が起き、危うくドイツやイタリア、スペイン、オランダなど11か国の地域で1700万kW分もの大停電が起きる寸前になったことがあります。その反省から、現在の最新の風力発電機は、電圧が変動しても系統から切り離さないしくみ(LVRT)になっていますが、中国では旧型ばかりで、それが問題になっているということです。

びっくりするのはその次の話で、中国は2010年末時点で風力発電の設備容量が4470万kWに達して世界一になりましたが、その内、電力系統に接続されているのは2956万kW分だけで、1514万kW分が接続されていないとのこと。つまり3分の1は建てただけで、まったく電力を送ってないのです。中国ってすごい国です。

しかし、現状でこれほどしょっちゅう脱落事故が起きているのに、残りを系統につないだりしたら、よけいに大変なことになるでしょう。つなぎたくてもつなげないというのが現実です。既存の風車をLVRTに対応させようとすれば、1基10万元かかり、全土に2万基以上あるので、100億元以上かかると。1元=12.4円で計算すると、1240億円以上。中国はお金が余っているから無問題ですが。