2011/06/16

日本は「脱原発」の道を歩み始めたのだから

これほど反原発の空気が広がっては、日本ではもう原発の新規建設は不可能でしょう。日本がこの状況で新規建設という選択をするほど「大人の社会」だったら、むしろ驚愕します。新規建設ができないということはどういうことかというと、炉が老朽化すれば廃炉していくほかないわけで、必然的に日本は「脱原発」の道を歩み始めたのです。

そもそも事故の前から、東大をはじめとする日本中の大学で原子力工学科は不人気のため次々に消滅していて、人材の補給もままならなくなっています。これで新規建設が止まれば、何十年か後にやっぱり建設すると言っても技術は失われているでしょう。海外での受注も今回の事故で減るかもしれません。GEやウェスチングハウスのように、東芝、日立、三菱重工は原子力部門をアレバやロスアトムなど海外企業に売り飛ばすかもしれません。

反原発派の人々にこう言っても無駄かもしれませんが、すでに「脱原発」は既定路線になったわけで、それで十分じゃないですか。ドイツやイタリアと違って日本は海外から電力を輸入することができないのです。それなのに「今すぐ全基停止」なんてしたら、日本中で電力不足が起き、多くの国民が計画停電でひどい目に遭います。電力不足で日本企業の工場が海外に逃げ出すと書きましたが、その多くは都市部ではなく地方にあります。原発を止めるのなら、そこで働いている何千人もの職員も雇用を失います。発電しないのなら電源交付金などの補助金もなくなるでしょう。ゆっくりと進めるならまだしも、急にストップすれば地方経済に大打撃を与えます。

そうなると逆に「やっぱり原発は必要だ」という方向に進んでしまうのではないでしょうか。「再稼働も認めない」というラジカルすぎるやり方は、むしろ逆効果になるような気がします。